M&A・事業承継コラム

食(フード)業界の「人手不足」を解決するM&Aという選択肢

飲食店、給食センター、食品製造(食品メーカー)、惣菜加工など、食(フード)に関わる事業は、私たちの生活に欠かせない産業です。

しかし、近年は慢性的な人手不足や労働環境の厳しさから、事業継続が困難になるケースが増えており、採用コストの上昇や定着率の低下、技術の属人化など、改善が難しい課題が背景にあります。

こうした状況に対し、事業を存続させる手段として、M&A(事業承継)への注目が高まっています。M&Aは単なる「売却・買収」ではなく、事業としての価値、雇用、ブランド、味、地域とのつながりを未来につなぐための選択肢です。

本記事では、食(フード)業界における人手不足とM&A活用の背景、売り手・買い手双方のメリット、検討のタイミングについて解説します。

目次

食(フード)業界の深刻な人手不足について

食(フード)関連の事業は、業務負担が大きく、経験を必要とする作業が多いという特性があります。そのため、人材が確保できないことは、売上や品質、そして経営の継続・維持不能に直結します。

労働負担が大きく、人材が定着しにくい

早朝の仕込み、夜遅い閉店作業、接客と現場作業の並行、衛生管理など、業務は多岐にわたり、その負担の大きさから、働き手が長期的に定着しにくいという課題があります。

技術・味が属人化しやすい

多くの事業・企業において、調理(料理)や仕込みのスキルや、業務を円滑に回すための知識は現場経験によって積み上がるものです。

長く務めた担当者が離職した結果、味が変わる・業務が回らないなど、多くの企業で事業継続に影響が出るケースが散見されます。

採用コストの増加

採用費の増加、人材紹介手数料の高騰、即戦力人材の確保難など、採用にかかるコストは年々上昇しており、人手不足は経営にとって長期的リスクとなっています。


売り手にとってのメリット

ここでは、事業を譲渡する側が得られる主な価値を整理します。

人手不足や経営の負担が重くなるなかで、M&Aは無理に事業を続けるのではなく、「守りながら受け継ぐ」ための選択肢となります。

廃業せず、事業を継続できる

廃業を選択した場合、店名を含めたブランド・味・店舗の歴史・地域や常連客を含めたお客様との関係性といった価値は失われてしまいます。

一方、M&Aによって事業を継承することで、これらはそのまま維持され、地域に根付いた存在として事業を継続できます。

「この味が好き」「この店(品物)がないと困る」という声がある店舗や製品ほど、事業を閉じることは地域資源の喪失にもつながります。

M&Aは、そうした文化的・人的な価値やつながりを途切れさせない手段の1つです。

従業員・スタッフの働く場所を守ることができる

人手不足の食(フード)の現場において、従業員・スタッフは貴重な戦力です。廃業の場合、従業員は新しい職場を探さなければならず、金銭的・精神的な負担や生活への不安が生まれます。

M&Aでは、経営者を含む運営の主体は変わっても、労働環境は継続できるケースが多く、従業員・スタッフが働き続けられる環境を維持できます。

「採用に苦労して育てた従業員を手放さずに済む」「自社製品・店舗を含むブランドを深く理解しているスタッフの離職を防ぐ」という点も、売り手にとって大きなメリットです。

経営者の負担を軽減し、次の人生に進む準備ができる

食(フード)業界の一例として、飲食業は身体的・精神的負担が大きく、店主や料理長が限界を迎えやすい業界です。

経営者が店のために働き続ける生活から離れられず、気付けば休息の取れない状態になっていることも少なくありません。

M&Aにより経営を託すことで、経営者自身は「引退」「別事業への挑戦」「家族との時間」など、自分の人生を見つめ直す余裕が生まれます。

継ぐ相手がいないという理由だけで事業を終わらせる必要はありません。M&Aは「終わらせるため」ではなく、「未来につなげるため」の手段です。


買い手にとってのメリット

買い手企業にとって、食(フード)関連のM&Aは、人材確保と事業拡大を同時に実現できる戦略となります。

ゼロから立ち上げるよりリスクが小さい

飲食店や食品事業は、新規立ち上げ時に失敗リスクが高い業態です。立地選定、内装工事、従業員(スタッフ)採用、メニュー開発には時間と費用がかかり、収益化には通常数ヶ月〜数年を要します。

M&Aを行った場合、すでに業務フローや顧客、運営体制が整っているため、即時稼働が可能なため、収益化までの時間を大幅に短縮し、投資回収の見通しを立てやすくなるメリットがあります。

技術・味・ブランド力を獲得できる

飲食・食品事業において、製造・調理レシピ、仕込み技術、接客オペレーション等は、他社が模倣しにくい「独自価値」です。特に職人や料理長が長年積み上げてきた味は、企業にとって新たな武器になります。

M&Aでは、こうした無形資産(ブランド・味・教育ノウハウ)をそのまま引き継げるため、新規参入や商品ライン拡充において非常に優位性があります。

人材を維持したまま事業拡大ができる

多店舗展開を進める企業にとって最も難しいのは、「人材確保」「現場教育」です。

M&Aで既存の従業員(スタッフ)、店長・料理長がそのまま在籍することで、運営に必要な人材がすでに揃っている状態で事業拡大が可能となります。

採用コストや育成期間を最小限に抑えながら規模拡大できる点は、買い手にとって大きな戦略的メリットです。


M&Aを検討するべきタイミング

以下のような兆候がある場合、早期の検討が望ましいと言えます。

  • 店主・料理長の負担が増えている

  • 採用しても定着が続かない

  • 将来的な後継者が見つからない

  • 店舗運営が属人的になっている

「まだ続けられるうち」に検討することで、条件の良い選択肢が広がります。

食(フード)業界の人手不足は、努力だけでは解決が難しい長期的な課題ですが、そんな中でM&Aは「事業を終わらせる」のではなく、「事業を守る・つなぐ」ための手段となります。

  • 味やブランドを未来へ残す

  • スタッフの働く場を守る

  • 経営者自身の負担を軽減する

人手不足に直面したときこそ、事業をどう「続けるか」を選択するタイミングです。

執筆パートナー

加藤 良大

パートナー情報

ライティング歴10年超のフリーライター。医療・美容・制度・ビジネス全般など幅広いジャンルで専門家から高評価を得ている。執筆実績は2万本以上。3人の父であり、1人が障害を持っているため、児童関係の制度や介護に関する情報にも詳しい

WEBページ

https://writer-k-medical.com/

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